コンサルタントから「MS法人をつくりましょう」と言われたら注意すべき理由とは?
ドクター総合支援センターの近藤隆二です。
MS法人に関するご相談をよくいただきます。
既に作っている場合、作ることを勧められている場合など様々です。
しかし、本当に意味があって役立つケースはほとんどありません。
MS法人は特別な法人でも何でもなく、普通の会社です。
医療に関わる仕事をしてるのでMS(メディカルサービス)法人という名で呼ばれてるだけです。
MS法人は魔法の箱で、これを使うと節税ができるのではないか、良いことがあるのではないかというイメージがありますが、そんなことはありません。
もちろん効果があることもありますが、言われるままに詳しく検討して作っていることはほとんどありません。
MS法人を作りましょうと言われたら、具体的に誰が社長で社員は誰なのか、どのような仕事をするのか、お金の流れはどうなるのか、どのようなメリットがあるのかを数字で明らかにする、などして判断するようにしましょう。
最近の事例やMS法人についての説明をお話ししていますので、以下の動画をご覧ください。
また、医療法人を設立しながら、MS法人も設立して取引をしているケースがあります。
今まで多くの事例を見てきましたが、明確な目的を持って、意味のあるMS法人の運営をしていることはほとんどありませんでした。
医療法の改正に伴い、実質的な配当を防ぐために医療法人と密接な関係があるMS法人との取引を行政へ報告する義務が出てきた現在は、新たにMS法人を設立して医療法人と取引することは慎重に検討してください。
先日、私のクライアントに元国税局査察官だったという税理士からアプローチがありました。
理事長先生が、
「医療法人でお金を使っても経費と認められないものがあるので、何とかならないか」
と調剤薬局の社長に相談したところ、紹介されたようです。
理事長先生から、その税理士と一緒にミーティングをしたいとのご要望があり、送られてきたメールが転送されました。
そこには、以下のように書かれていました。
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経費は医療法人では何も使うのは無理だから、経費はMS法人で使ってくれとのことでした。
以下**さんの意見です。
MS設立の際は、なるべく多くの業務を医療法人からMSに移管して、MSにある程度の収入を確保していただけたらと思います。
MS法人の運営に当たっては、ヒト、モノ、カネが実際に動いていることがとても重要(客観的に見てMS法人の行為であると認定しうること)ですので、相応の対応が必要ですのでよろしくお願いいたします。
補足
昨日医療法人の決算書・確定申告書を拝見いたしましたが、仮に税務調査があるとした場合、リスクが高いと感じました。
詳細はお会いした時にお話しさせていただきたいと思います。
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前半部分のMS法人との取引についての考え方は正しいのですが、根本的な部分に間違いがあるのではないかと感じ、理事長先生に以下のメッセージを送らせていただきました。
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ご連絡をいただき、ありがとうございます。
まずは先方様のお話をよくお聞きしたいと思います。
その後、私が疑問に感じていることなどを質問させていただきます。
1)MS法人の廃止を検討する医療法人がある中で、なぜあえてMS法人を作ろうとするのか。
医療法の改正で関係性の深い医療法人との取引内容を行政に報告する義務ができました。
これは事実上の配当行為をしているのではないかという問題があったためできたルールです。
詳しくは以下で御確認ください。
2)MS法人は税率が医療法人よりも高く、消費税もかかります。今後消費税率のアップも視野に入れなければなりません。
また、MS法人でも税務業務が発生するなど、コストが大幅にアップします。
MS法人を設立することにより、トータルのキャッシュフローのメリットはあるのでしょうか。
3)そもそも、医療法人で認められない経費がMS法人で認められるのでしょうか。
4)国税局に在籍していたことが税務調査時にメリットになり得るのでしょうか。
その他、話の流れで質問をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
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このメッセージを先方にお伝えいただいたのでしょうか、その後ミーティングは中止になりました。
このように、目先のメリットのように見えることだけを根拠にMS法人を作ることをすすめる税理士もいますので注意してください。
また、個人開設のクリニックの場合にもMS法人を設立していることがありますが、本当にメリットがあるのかどうかチェックすることをおすすめします。
もちろん明確な目的があり、意味のあるMS法人もあると思います。
MS法人を目的にするのではなく、現状の何を変えたいのか、そしてその手段としてどのような方法が最適なのかということを考えてみてください。
医療法人における透明性の確保等について 厚生労働省
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