MS法人を設立すると相続対策になるのでしょうか?
ドクター総合支援センターの近藤隆二です。
このところ、MS法人の設立に関するご相談がいくつかありました。
MS法人の設立は税理士さんが薦めることが多いようですね。
先日、ホームページからこんなご相談がありました。
数年前に設立した医療法人で土地を借り、建物を建てクリニックを開設しています。
理事長はご高齢で、近い将来医療法人をご子息に承継することになっています。
この土地を購入することになり医療法人で購入手続きを進めようとしたところ、税理士さんからMS法人を設立することを勧められました。
主な目的は相続対策と医療法人が乗っ取られた時、解散時に土地を手放さなくて済むようにすること、節税対策などとのこと。
メールでのお問い合わせでしたので、状況が詳しくわかりませんでしたが、一般的な考え方として以下のようにお答えしました。
医療法人を設立して数年とのことですので、持分のない医療法人ですね。
持分のない医療法人が土地を購入されても、それは相続財産にはなりません。
ですので、ご長男が承継をされることが決まっているのでしたら医療法人で購入された方が簡単な相続対策になります。
(相続対策の目的や状況によってはまた違う判断になることがあります。)
医療法人を解散するときに残余財産が国や地方公共団体のものになることは事実ですが、まず解散しなければ良いですし、解散するときに残余財産がなければ問題はありません。
(解散時には退職金などで資産を個人に移し、財産がない状態にしておくということです。)
個人の医療法人が乗っ取られることは余程のことがない限りありませんので、気にされる必要はないと思います。
(医療法人の社員の構成によってはリスクがある場合もありますので社員構成の確認と、留意をしてください。)
**先生のお考えの通り、MS法人は余計な経費がかかります。
また、医療法人と比較しても税率が高くなります。
売上げ額によっては消費税がかかることもありますので、お金の面ではまずメリットは出ないと思います。
MS法人の株主や社長に誰がなり、土地の購入資金をどう工面するのか、返済は可能なのかなど具体的な運用を考えると現実的でない場合もあります。
利益分散は医療法人の理事にファミリーの方が就任すれば理事報酬を支払うことができますので、それでも可能です。
このような理由で今回の案はお勧めできないと思います。
限られた情報のみしかわからないので、一般論でのお答えをさせていただいたことをお伝えしました。
その後、電話をいただき、税理士さんにこのことをお伝えしたところ、医療法人で土地を所有したのちにご子息が理事長になり短期間のうちに亡くなると、退職金を多くは払えないので残余財産を個人に移すことはできなくなる、それが心配だ・・・
という答えが返ってきたとのことでした。
こうなると、なんでもいいからMS法人を作る理由を考えているとしか思えなくなってしまいます。
このように非常に起こる確率の低い場合でも対応策はありますが、電話では説明が難しいので、今度お会いして詳しくお伝えすることにしました。
具体的な状況を想定しないまま何となくメリットがあるのでは?というイメージでMS法人の設立を勧められるケースをよく見ますが、判断に迷う時には具体的なシミュレーションをするといいですね。
目的は何なのか、誰が株主・社長になり、どのような取引をし、いくら借入をし、その返済条件はどうなり、いくら売上が出て、誰にいくら報酬を支払い、経費はいくらかかり、利益がいくら出るのか、返済は可能なのか、事業は継続できるのか、メリットは出るのか・・・・
などをデータで現すことをお勧めします。
そして、データで現せない部分のチェックも必要です。
法律的に問題はないのか。
その方法で兄弟など他の関係者の不満は出ないのかなど。
MS法人が全く役に立たないということではありません。
状況によっては有効な手段になることもありますが、設立は多角的に総合的に検討されることをお勧めします。
今回のテーマについて動画でお話ししていますので、以下で御覧ください。
MS法人は役に立つのでしょうか?
当社ではMS法人設立に関するご相談もお受けしております。
ご希望の方はこちらのページから「無料相談希望」と書いてご連絡ください。
連絡先ページ
無料メールマガジン登録フォーム
ドクターの経営・ライフプランのリアルなヒントを無料配信しています。