医療法人で分院を開設するときの留意点は何でしょうか?

ドクター総合支援センターの近藤隆二です。

 

クリニックを開院し、患者さんが増え、医療法人を設立し、さらに患者さんが増えてきた。

こんな状況になると

「新たに分院や介護施設などを開設したい」

という相談をいただくことがよくあります。

その気持ちはよくわかるのですが、分院開設には大きなリスクもありますので慎重に検討することをお勧めしています。

 

まずは分院を開設する目的を明確にしましょう。

単純に規模を拡大したいだけなのであれば、あまり分院開設はお勧めしません。

「現在の医業経営をこのように良くするために分院開設が必要だ」

というような目的を持って検討していただければと思います。

 

目的が明らかになったら、分院の事業計画を作り、医療法人全体で事業が成り立つかどうかを確認します。

設備投資やリース、人員体制などをできるだけ具体的に考え、資金が回るかどうかを確認しましょう。

資金が不足するようであれば金融機関からの借り入れも検討が必要です。

くれぐれも気をつけたいのは、売上計画、設備投資額、経費を甘めに考えないことです。

厳しめの数字でチェックするようにしましょう。

特に注意が必要なのは、土地や建物など高額な投資をする場合です。

借り入れをして、不動産に投資をすると利益が出るのに、お金が不足することがあるからです。

分院開設当初は赤字になることが多いので、黒字化しお金がプラスになるまでは時間がかかることが想定されます。

その間は本院の利益や資金で赤字やお金の不足を補わなければなりません。

それが可能なのかどうか、慎重に検討してください。

お金が回らない場合は、分院だけではなく医療法人そのものが経営危機に陥ることになりますので、勇気を持って計画から撤退することも検討してください。

 

分院を開設するには、医療法人の定款変更や開設許可申請など行政に対する煩雑な手続きも必要です。

ここで行政に提出する事業計画が認められないと、分院を開設することはできません。

また、行政への手続きと並行して不動産購入・賃貸契約、資金調達、設計・施工、医療機器購入、スタッフ募集・採用、ホームページ制作、広報なども行う必要があります。

単純にクリニックを開設するよりも行うことが多く複雑ですので、スケジュール表きちんと作ってから行動するようにしましょう。

また大きな注意点の一つとして、分院の院長先生の待遇問題があります。

分院を開設するにあたり、分院長の報酬額、利益があがった場合の昇給など、勤務条件を双方が納得いく形に決めておきましょう。

勤務条件が約束と違うとトラブルになることもありますので、その内容は文書で残しておくことが望ましいと思います。

 

分院の開設は理事長先生が開院された時よりも、多くの困難が伴うことがあります。

なぜならば、これまで医療法人の経営がうまくいったのは理事長先生の力によるものですが、分院の経営がうまくいくかどうかは分院長の力で決まることが多いからです。

理事長先生と同じレベルの医師としての力、経営者としての力がある方が分院長になるのであれば問題はないでしょうが、そんなことはまずないでしょう。

ですので、理事長先生が思うほどうまくいかないこともあるということを想定してください。

 

私自身はこれまで、分院長とのトラブルが起こり裁判沙汰になったことや、医療法人が倒産の危機に瀕した事例などを数多く見てきました。

くれぐれも慎重に検討していただければと思います。

 

これまで厳しいことばかり書いてきましたが、私は分院開設や介護施設などの開設を全て否定するわけではありません。

地域の方々のために、さらに良い医療法人の経営を目的として、緻密な計画をもとに分院や介護施設などを開設することは素晴らしいことだと思います。

熟慮をして、さらに良い医療法人の経営を行っていただければと思います。

 

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