クリニックの新人スタッフがすぐ辞めてしまう・・・その理由とは?
ドクター総合支援センターの近藤隆二です。
このところ、クリニックに新たに入ったスタッフがすぐに辞めてしまうというケースをよく見受けます。
その原因は様々です。
そのスタッフの根本的な能力不足や仕事とのミスマッチなどもありました。
これは面接時に詳しく質問をするなどで防ぐ努力をされていると思いますが、実際に働いてみないとわからないことが多く、不可抗力のこともあるかもしれません。
また、勤務条件に関する認識の相違があったということもよくあります。
これは面接時や採用時に詳しく説明し、書面で双方が確認することで防げることが多いですね。
その他にも、様々な原因がありますが、最近は業務が複雑になりすぎているということで深刻な危機に陥ってるケースをよく見受けます。
クリニックを経営していると様々なトラブルやクレームなどが起こります。
そして、その都度それらへの対応策を考え、細かく個別ルールを作り続けていくと、そのクリニック独自の複雑なルールが多くできてしまい、自分たちの首を絞めることになっているのです。
スタッフの日々の業務が複雑化し、手間がかかり、ストレスが溜まってしまうのですね。
そんなところに業務に慣れていない新人スタッフが入ってくると、現スタッフはさらに忙しくなるので十分な教育をすることができません。
その結果、新たなスタッフがなかなか独り立ちすることができず、成長のスピードが遅いことにストレスを溜めた現スタッフが知らず知らずのうちに厳しく当たってしまうということが起こったりします。
新人スタッフは十分教育を受けることもできず、叱られてばかりではたまったものではありません。
また、不要と思われる業務やルールが多くありあまりにも複雑だと、ここでは働けないな・・・
という気持ちになっても仕方がありません。
こんなネガティブなスパイラルに陥っているクリニックが実は多くあるのではないかと感じています。
では、こんな時にはどうすればよいのでしょうか。
私は業務をできるだけシンプルにし、特定のスタッフのみではなく誰でもすぐにできるようにすることで現状を改善することができると考えています。
しかし、これは言葉で言うのは簡単ですが、実際に行うのはなかなか骨の折れることです。
そして、これを実現するには院長先生の積極的な関与と、責任を持ったトップダウンの意思決定が不可欠だとも思います。
なぜならば、スタッフはクリニックのために良かれと思って改善を続けてきていて、その結果業務が複雑化しているので、なかなか現状に問題があるとは思えないからです。また、自分の感覚で改善をしているので不要な業務や非効率な業務がどれなのかもわからないのです。
また、真面目なスタッフほど細かい改善を行う傾向が強く、その背景には問題が起こった時に責任を問われることに対する恐怖心があったりします。
そのようなスタッフに安心して業務改善をしてもらうには、院長先生の積極的な働きかけが不可欠なのです。
私がこのように考えるようになったのは、あるクライアントの事例をお聞きしたからです。
そのクリニックは業務の複雑化が起こり、新人スタッフが業務についていけず、辞めてしまうという負のスパイラルに陥っていました。
これではダメだ!と考えた院長先生はスタッフとの改善ミーティングを行い、
「特定の人だけではなく、だれでもすぐに行える業務体制にする」
というトップダウンの意思決定を行い、改善を行ったのです。
具体的な事例として1日の最後の現金合わせの業務改善がありました。
それまでは記録と現金に差があると、それが合うまで残業をしてチェックを繰り返していました。
これは良いことなのですが、その結果しばしば遅くまで残業せざるをえなくなってたのです。
そして、残業をしても現金が合わないとその業務は無駄になってしまいます。
院長先生はこれでは非効率で問題だと感じ、決められた手順でチェックしても現金が合わない時にはそれで構わない。その代わり、現金が合わなかった日の担当者とその金額を毎日ノートに書くようにしたのです。
この方法に変更することにより、残業が減り、スタッフのストレスも解消しました。
また、ノートに記録を残すことにより、不正の抑止力にもなったとのことです。
このような考え方で、その他の業務も院長先生の責任のもと不要な業務を削除し、業務の簡素化を図っていったのです。
もちろん、簡単に事が進んだわけではなく、じっくりと話し合いをする場を設けながら、スタッフも納得づくで改善を継続したのです。
この改善活動がうまくいった要因は、院長先生が大局的な方向性を示し、結果に対する責任を自分が負うと伝えたことで、スタッフが安心して業務の改善を進めることができたことだと思います。
スタッフの採用環境が厳しくなっている現在、採用したスタッフに長く働いてもらうことは経営の最重要事項です。
そのためには現スタッフも新人スタッフも働きやすい環境を整えることが欠かせません。
その対策の一つとして、業務の簡素化は避けて通れないことだと思います。
一朝一夕には全てをよくすることはできませんが、まずは一つの業務でもよいので着手することをお勧めします。
そして、業務改善の中には院長先生自身の診療や業務も含まれていて、院長先生の協力が欠かせません。
院長先生自身が業務改善の必要性を感じ、行動しようとしても、様々な要因で改善を進める環境がなかなか整わないことがあるかもしれません。
そんな時には外部の方々の力を借りることも検討してみてください。
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