なぜクリニック過密地域に開院するのか?

ドクター総合支援センターの近藤隆二です。

このところ、都市部では以前にも増してクリニック過密地域に同じ診療科で開院するクリニックが増えているように感じます。

私のクライアントの近隣にもクリニックビルが複数でき、同じ診療科のクリニックが開院したため患者数が減ってきています。

このような状況は厚生労働省も外来医師の偏在の問題として捉えていて、対策を検討しているようです。
(マスコミなどで来年から開院規制がかかるとの報道がなされていますが、まだ検討中の段階です。早く開院しなければならないという煽りをしている会社もあるようですが、今のところむやみに慌てる必要はありませんのでご注意ください。)

先にお伝えした私のクライアントの患者減少数はわずかで、これなら大丈夫と言えるところで下げ止まり、ホッとしています。

このことから患者さんが、これまで信頼して受診していたクリニックから新たなクリニックに受診先を変えることは相当高いハードルがあるのだなということを再認識しました。

患者さんからすれば新たなクリニックを受診すると、自分の健康状態や受診歴などを改めて詳しく説明しなければなりません。

また、何よりも初めてのクリニックを受診する時には、どんな先生なんだろう?どんなクリニックなのだろう?先生は優しいのかな?よく話を聴いてくれるのかな?スタッフはいい感じなのかな?今までの治療と同じことをしてくれるのかな?などと不安に感じるものです。

このようなストレスや不安を乗り越えることが大きなハードルとなるのです。

これはこれまで信頼できる診療を続けてきたクリニックにとってはメリットですが、新たに開院するクリニックにとっては大きなリスクです。

近隣の信頼できるクリニックから自院に転院する可能性のある患者数は少ないので、経営を継続することが困難になるからです。

このような状況で経営を継続するための受診者数を確保するためには、これまでのクリニックを受診していなかった患者層に来院してもらわなければなりません。

また、通常考えられる診療圏よりも広い範囲から来院してもらう必要があるかもしれません。

そのためには、他のクリニックで行っていないような治療や、同じ診療科目でもまったく違う専門分野で治療を行う、治療そのもの以外で選んでいただくなどの戦略をきちんと考えなくてはなりません。

そうしなければ、コンビニエンスストアが同じ地域に何件もでき、その結果閉店しなければならない店が出てくるなどという状況になってしまうのです。

限られた地域に同じ診療科目、同じ治療をするクリニックがたくさんできても、患者さんにとってのメリットはあまりありません。

また、これまで開院していたクリニックにとっても、新たに開院するクリニックにとってもメリットはありません。

言ってみれば誰にもメリットがないのです。

では、どうすればいいのでしょうか?

当たり前のことですが、私はできるかぎり自分と同じような診療を行うクリニックがない場所を選んで開院することをお勧めしています。

「そんな場所はもうない」

と言われる方が多いかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

これまで多くの先生から開院のご相談を受けてきましたが、すでに開院エリアを決めていて、他のエリアでの開院を検討するようお勧めしても拒否されることが多かったように思います。

そして、その多くの理由は自分の都合や人から勧められたからといったことがほとんどでした。

私は開院をする場所を決める時には、その地域の患者さんへの役立ちの総量で考えることが大きなポイントだと考えています。

そうすれば多くの患者さんが助かり、喜ばれ、受診者数も増え、結果として自院の経営も軌道に乗り、自分がしたい医療を継続できるという善循環に入ることができるからです。

これは理想論のように感じるかもしれません。

また、ご高齢の先生しかおられない地域など、状況によってはクリニック過密地域でも開院する意義があることもあるでしょう。

様々な個別の状況を踏まえ、可能なかぎりそのような場所を探してみてください。

クリニックの開院は一生の一大事です。

医師として幸せな人生を送るためにも、ぜひ慎重に開院の場所を検討してみてください。

私がこのように考える理由は、今後のクリニック経営を取り巻く環境が大変厳しくなることが予想されているからです。
詳しくは以下の動画をご覧ください。

クリニック経営に冬の時代がやってくる その1

クリニック経営に冬の時代がやってくる その2

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