保険診療を行いながら選ばれるクリニックになるのは難しい?
ドクター総合支援センターの近藤隆二です。
私のクライアントは保険診療を主に行っているクリニックばかりです。
ありがたいことに、院長先生、スタッフの方々の努力のおかげで、多くの患者さんに来院いただいているところがほとんどです。
保険診療は国が決めた手順通りに行わないと報酬を請求できない仕組みになっています。
この手順に反すると請求しても戻ってきてしまいますよね。
なので、世の中の保険診療をしているクリニックはどこに行っても同じ手順で診療をしていることになるのですが、患者さんが多く来院するクリニックとそうでないクリニックに分かれています。
なぜでしょうか?
決められた手順の診療以外にその理由があり、手順は同じでもその質に差があるということが予想されます。
これは医療以外の様々なサービス業のことを考えてみればよくわかります。
例えば美容室はどこに行っても同じ手順でカットをしてくれますが、繁盛するところとそうでないところがありますね。
皆さんが通っている美容院には自分にとっての他とは違った良さがあるのではないでしょうか。
これは保険診療を行うクリニックにも言えることです。
他とは違った良さがあると、それに価値を感じる患者さんが来てくれるのです。
これは差別化ポイントとか独自性などという大げさなことでなくても良いのです。
患者さんが価値を感じることは様々です。
例えば、保険診療の手順に定められていること以外で、日々の診療の中で感じたり、気づいたり、掴んだことを患者さんにフィードバックしてあげる。
保険診療を組み合わせたり、自由診療をうまく組み合わせたり、患者さんが良くなるために様々な工夫をする。
このようなことで成果が出れば、価値を感じていただくこができるのだと思います。
そしてこれは既に先生方が日々行っていることではないでしょうか。
私は先生方の日々の診療がある意味、研究の場になっているのではないかと感じています。
そして、そのような医療に長年携わってこられた方々は、一人一人それぞれ独自の医療を作り続けているのではないかとも思います。
先日、「医療者が語る答えなき世界」という本を読みながら、上記のような考えが浮かんできました。
その本の一部を引用させていただきます。
以下引用
「本章で紹介した人々の苦しみや不安は、正しい医学的知識をかれらに教えたり、かれらの身体をモノとみなして介入すれば解決する問題ではない。
むしろそこで重要になるのは、医学を目の前の患者にインストールすることではなく、標準化が不可能なそれぞれの患者の人生の文脈に、医学という知をどう混ぜ合わせていくか、医療者の持つ専門知と患者の人生の間にどのような再現性のない知を立ち上げ、実践し続けていくかである。
ここで紹介した・・・・腫瘍内科医、理学療法士、看護師たち、そして漢方医・・・の仕事には、明らかにそのような実践が見られるといえるだろう。
医療者の仕事の根幹は、モノとしての人間を徹底的に標準化することで体系づけられた医学という知を、それぞれの患者の人生にもっとも望ましい形でつなぎ合わせ、オーダーメイドの新しい知を患者と共に作り出していくことにある。
そこで作り上げられる知は、標準化されることもなければ、再現されることもないが、人間の営みが本来そのような再現性のないものである以上、医療という知もまた再現性のなさをはらむ。
医療者の仕事は医学を医療に変換すること。本章ではこう結びたい。」
引用終わり
著者が文化人類学者だということ、この文章は腫瘍内科の事例について書かれていることから少し難しく重い内容になっていますが、クリニックでも同じことがいえるのではないかと思います。
ご自分がこれまで行ってきたこと、今行っていることをこのような視点で見返していただくと新たな気づきが得られるかもしれません。
医療者が語る答えなき世界
「いのちの守り人」の人類学 磯野真穂 著
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