クリニックのスタッフに院内のルールを伝え続けなければならない理由
ドクター総合支援センターの近藤隆二です。
クリニックの経営をする上で、スタッフが心を合わせて同じ方向に向かって前向きに働ける環境を整えることは大切なことです。
このように言葉で書くと当たり前のことのようですが、現実にこれを実現するのは至難の技です。
このような環境を整えるために大事なことは、クリニックで働くルールを明確にして周知徹底することです。
そして、このルールは細かいものを沢山作るのではなく、シンプルで本質的なものを少数準備することがポイントです。
細かいルールが沢山あるとまず覚えるのが大変で、ルールを守ることに汲々としてしまい、ルールを守ること自体が目的化してしまうからです。
シンプルで本質的なルールを作り、徹底することの有効性を知ることができる面白い事例があります。
人工生命研究の中で、「鳥の群れ」の挙動に関するコンピュータシミュレーションがあります。
このシミュレーションが興味深いのは、一羽一羽の鳥に、次の三つの行動規則を与えておくだけで、これらの鳥が、秩序だった「群れ」としての振る舞いを示すということです。
(1)近くの鳥が数多くいる方向に向かって飛ぶ。
(2)近くにいる鳥達と飛行の速さと方向を合わせる。
(3)近くの鳥や物体に近づきすぎたら離れる。
すなわち、一羽一羽の鳥(個)に、これだけの簡単な行動規範を与えておくだけで、結果として、これらの鳥の群れ(全体)は、あたかも「集団の意志」があるかのように、一定の秩序を持った群れを形成するのです。
これはクリニックのような組織にも応用できるのではないでしょうか。
シンプルで経営の根幹にかかわるルールを少数作り、それを周知徹底することで院長先生のイメージするクリニックに近づいていくことができるとすれば素晴らしいですね。
しかし、コンピュータは一度条件を与えると、永久的にそれを守ることができますが人間はそうはいきません。
そこが大変難しい所です。
スタッフはなぜそんなルールがあるのか、なぜそれを守らなくてはいけないのかなどの疑問を持ったり、すぐに忘れたりします。
ですので、院長先生はそれらの理由や目的を伝えながらルールを説明し続けなければならないのです。
「一度言ったからもう言わなくていいだろう」
ということは通用しないのです。
また、作ったルールは院長先生にも適用されるということも忘れてはいけません。
「患者さん、スタッフには笑顔であいさつする」
というルールを作ったにもかかわらず、院長先生がいつも機嫌が悪くあいさつをしなければ、スタッフはルールを守ろうとは思いませんよね。
ぜひ、自分はどのようなクリニックにしたいのかを考えていただき、そのためにはどのようなルールがよいのかを考えてみてください。
ここでお伝えした「鳥の群れ」の挙動に関するコンピュータシミュレーションについては以下の書籍を参考にさせていただきました。
ご関心のある方はご一読ください。
複雑系の経営 「複雑系の知」から経営者への七つのメッセージ 田坂広志 著