患者さんに選ばれ続けるクリニックの作り方
今日は「患者さんに選ばれ続けるクリニックの作り方」についてお伝えします。
前回の記事でもお伝えしましたが、これからのクリニック経営の環境は、大変厳しくなることは間違いありません。
その中でも、患者数の減少に対応することは、最大の課題の一つです。
人口の減少や高齢化などによる外来医療需要の大幅な減少、新規開院の競合クリニックの増加などにより単純計算すれば1クリニックあたりの患者数は大幅に減少します。(地域によってはこの限りではないこともありますが。)
これまでと同じことをしていれば売上・利益が減少し、クリニック経営を維持することが困難になるでしょう。
クリニック経営にもビジネスの視点が重要
では、このような時代に経営を維持するためには、どうすれば良いのでしょうか?
最も重要なことは、クリニック経営でもビジネスの視点を持つということです。
ビジネスというと、お金儲けのイメージがあるかもしれませんが、ここで言うビジネスとは、患者さんに価値を提供し、その対価を得るという意味です。
言い換えると、患者さんの役に立ち、満足してもらうことで、継続して受診していただくことができるよいうことです。
また、紹介や良い口コミをしていただくことで、お金は後からついてきます。
そのためには、患者さんの視点に立ち、患者さんが何を望んでいるのかに意識を集中し、それに応えるための行動を継続するというイメージです。
このような行動をすることで、患者さんから共感と信頼を得ることができ、クリニック経営を継続することができるのです。
患者さんに選ばれ続けるためには
患者さんに選ばれ続けるためには、クリニック経営全体を整える必要があります。
これを私は「コ・マ・チを整える」と言っています。
コ・マ・チはコミュニティ・マーケティング・チームの頭の文字をとった略語です。
コミュニティとは自院を受診する可能性のある方々、自院を受診すると適切な治療を受けられる方々助かる方々、そのような方々を紹介してくれる人や組織の集合体です。
マーケティングとはコミュニティの方々が必要としている情報、役に立つ情報、安心できる情報、自院を選ぶために必要な情報などをわかりやすく伝え続けることです。
チームとはコミュニティの方々に伝えた通り、あるいはそれ以上の診療・対応をし続けるためにクリニックという組織を整え続けることです。
患者さんに共感・信頼していただく
患者さんがクリニックに求めていることは、困っている症状を改善したい、健康の不安を解消したい、安心して健康な生活を送りたいなどです。
このようなニーズに応えてくれそうなクリニックに患者さんは共感し受診します。
そして、受診してそのニーズに応えてくれたクリニックを信頼していただけるのです。
コ・マ・チを整え続けることが患者さんから共感と信頼をいただくためには不可欠なのです。
共感・信頼を得るスタートは情報発信
共感していただくためには患者さんにまず自院を知ってもらうことが欠かせません。知らないクリニックを受診する患者さんはいないのですから。
自院がどのようなクリニックなのか、どのような診療をしているのかなど、患者さんが知りたいこと、必要としている情報を数多くわかりやすくしっかり伝えることがスタートです。
情報発信をする時に考えなければならないことは、
「自院の患者さんはどんな人で何を求めているのか?」
ということです。
どんな人(マーケット)かを明らかにして、何を求めているのかを考え、その情報(メッセージ)をどのようなメディアで伝えていくのかじっくりと考えましょう。
マーケット
どのような患者さんに受診していただきたいのか、どのような患者さんが受診するとしっかり治療できるのか助かるのか、どのような患者さんが自院とマッチするのかを全体的(どのようなクリニックなのか)、具体的(症状別・性別・年齢など)に考えてみてください。
メディア
現代は情報を発信するためのメディアが数多くあります。現在、最も有効なメディアはインターネット(ホームページ、ブログ、SNS、動画など)だと思われますが、これから新たなツールも出てくるでしょう。また看板などの旧来のメディアや、院内掲示板やパンフレットなど、コストパフォーマンスや自院の得手不得手などを考えなんでも利用しましょう。
メッセージ
患者さんに伝えるメッセージは、患者さんの役に立ち、患者さんが安心でき、共感することで受診を検討してもらえるものにしましょう。新型コロナウイルスの感染拡大時を振り返ってみると、感染対策をいかにしっかりしているかを伝えることが有効でした。現在では患者さんの症状別にピンポイントで具体的な情報を提供することが有効だと思います。その理由は以下で詳しくお伝えします。
いまどきの患者さんの受診パターン
いまどきの患者さんは何をするにもまずスマホで情報を検索をします。
いつもと違うなんらかの症状が出た時も同様で、まずこんな具体的なキーワードで検索します。
「暑くなって咳が止まらない」
そうすると、これに関連する情報が数多くヒットします。その中にはクリニックのホームページやブログの情報も数多く出てきます。その中に自分の症状と似ている情報があり、その治療方法や症状の改善例が書かれていれば患者さんはなんとなく安心するでしょう。
そして、そんな情報を提供しているクリニックがあれば共感し感謝をしてくれることでしょう。
患者さんはそんなクリニックを受診しようと思うのではないでしょうか。
その中に自分の近くのクリニックの情報がなければ以下のようなキーワードであたらめて検索するでしょう。
「暑くなって咳が止まらない 地域名 クリニック」
これでヒットしたクリニックがあれば患者さんは受診を検討しますが、それだけで安心はできません。
多くの患者さんは受診する前にそのクリニックの口コミをGoogleでチェックするからです。
評判がよければ受診を検討する、評判が悪ければ再度検索して少し遠くても口コミが良いクリニックの受診を検討します。
これは日頃の私自身の行動で、多くの友人・知人に話を聞いてもほぼ同じ行動をとっています。
このことがわかれば、クリニック経営全体(コ・マ・チ)を整えることが患者さんから選ばれ続けるためには不可欠だということを理解していただけるのではないでしょうか。
ホームページとブログの運用
先ほど様々なメディアを利用するとお伝えしましたが、現在はホームページ・ブログの活用が最重要だと感じています。
多くのクリニックの新患データをとる中で、このホームページ・ブログなどをみて受診する方が多いのです。
ホームページ・ブログは、クリニックの情報発信において非常に重要なツールですが、以下のポイントに注意して運用しましょう。
継続的な更新
ホームページやブログの情報は、継続的に更新することが大切です。定期的な更新は、検索エンジンでの評価を高め、患者さんに選ばれやすくなります。ページ数を増やし、文章量を多くすることも効果的です。
スマホ対応
これはほぼ全てのクリニックが対応していると思います。現在、多くの人がスマホで情報を検索します。クリニックのホームページはスマホ対応が必須です。スマホで見やすいデザインにすることで、患者さんが情報をしっかりと得やすくなります。
ブログ機能の活用
ホームページにブログ機能を組み込むことで、定期的な情報発信がしやすくなります。組み込んだブログを通じて患者さんに役立つ情報を提供し続けることで、ホームページ全体の検索エンジンでの評価が高まり、患者さんに選ばれやすくなります。外部のブログとホームページをリンクしているケースも見受けられますが、私は一体化したものをまず作られることをお勧めしています。
これまでホームページ・ブログを通じた情報発信についてお伝えしてきました。この世界ではSEO対策をすることが大切だということが言われますが、検索エンジンの判断は日々変わっていますので目先の対策はあまり意味がありません。最も有効なSEO対策は患者さんが欲している情報、患者さんの役に立つ情報をいかに継続して提供し続けるかということをよく理解していただければと思います。
まとめ
これまでお伝えしてきたことのまとめと追加の情報をお伝えします。
患者さんから選ばれ続けるクリニックになるためには、以下のようなことを心がけていただくと有効です。
1.患者さんへ情報提供し続ける。
(共感し自院を選んでいただける情報)
2.受診した患者さんに伝えた通りの診療・対応をする。言動一致。
(患者さんに信頼していただき継続受診、紹介、良い口コミを得る)
3.言動一致ができるようにクリニックというチームを整え続ける。
情報発信では以下のようなことに留意されると良いと思います。
1. 定期的な情報更新
情報発信は一度きりではなく、継続的に行うことが重要です。例えば、ブログの更新は週に1回、難しい場合は月に1回といったルールを作り、定期的に情報を発信しましょう。
私のクライアントでも、ブログを継続して書いていただいているクリニックがあります。その中の季節の変わり目に出る症状に関するものは、毎年繰り返し多くの方に読まれています。これが新規の患者さんに受診していただくきっかけになっています。書かれたブログは蓄積され、クリニックの大きな資産になっているのです。
2. 患者さんのフィードバックを活用
患者さんからのフィードバックを定期的に収集し、それをもとに情報発信をしてください。アンケートやインタビューが有効ですが、できればインタビューをしてじっくりと話をうかがい、自院を選んでくれている理由などを明らかにしてみましょう。理由がわかればそこをさらに磨くことで患者さんに選んでいただきやすくなります。また、選んでいただいている理由などの情報発信もしてみましょう。
3. 新しい取り組みの導入
新しい治療法や薬などが出てきた場合、それを積極的に取り入れ、患者さんに伝えましょう。患者さんは新しい医療情報をほとんど持っていません。そのような情報を伝えることで、自院を受診していない症状の改善を求めている患者さんを助けることができるかもしれません。
4. 細分化された情報提供
患者さんのニーズに応えるために、情報を細分化して提供することが有効です。例えば、特定の症状に関する情報や、特定の年齢層に向けた情報を発信することです。私は個別の患者さんの診療日誌のような内容の情報を提供することをお勧めしています。
結論
患者さんに選ばれ続けるクリニックを作るためには、クリニック経営全体(コ・マ・チ)を整え続ける必要があることをご理解いただけましたでしょうか。そうすることで患者さんの共感・信頼を得ることができ、厳しい環境の中でもクリニック経営を続けていけると思います。クリニックを開業する方も、既に経営している方も、これらのポイントを押さえて、患者さんに選ばれ続けるクリニックを目指してください。