クリニック経営冬の時代 院長先生の役割
「クリニック経営って、本当に大変だな…」
そう感じている先生も多いのではないでしょうか。 近年の医療を取り巻く環境は大きく変化し、以前のように安定した経営が難しい時代になっています。
私は現在の状況はクリニック経営は冬の時代だと感じています。
その理由として、今後人口減少や高齢化による外来医療需要の減少、クリニック数の増加による競合の激化による一医院あたりの患者数の減少、人材不足によるクリニックの運営が困難になることなどが挙げられます。
このような環境の中で、すでにクリニックを経営されている院長先生や、これからクリニックの開院を検討されている先生は様々な不安やストレスを抱えていることと思います。。
しかし、このような環境の中でも院長先生がしっかりと経営に取り組めばクリニック経営はいい状態で継続できると私は思っています。
これまでと比べるとクリニック経営は厳しくなった、と感じるかもしれませんが、他の業界と比べるとまだまだ恵まれた環境だからです。
成功するビジネスの3つの条件として、
1.顧客に購買する強い情熱があること
2.顧客がリピート購入すること
3.顧客に購入するお金があること
が挙げられますが、 医療業界は、この3つの条件を満たしています。
患者さんは、自分の健康に対して強い関心があり、健康でいたいという強い情熱を持っています。 生活習慣病など、継続的な治療が必要な患者さんは、定期的に受診されます。また、一度良くなった患者さんも、信頼できるクリニックであれば、何かあった時にまた受診しようと考えてくれます。 さらに、保険診療であれば、患者さんの医療費の負担が少なく、受診しやすい環境です。
クリニックの二極化 - 厳しい時代を生き抜くために
このような恵まれた環境の中でも近年、クリニックの二極化が加速しています。
患者数が安定している、または増加しているクリニックと、患者数が減少している、経営が厳しいクリニックの二極化が進んでいるのです。
様々な原因がありますが、私は院長先生が経営に真剣に取り組み続けているかどうかが最大の原因の一つだと感じています。
クリニックの院長先生の役割
院長先生の第一の役割は、医師としてしっかりと診療を行うことです。
これは皆さんが既にプロフェッショナルとして行っていることなので、大きな問題はないでしょう。
しかし、もう一つ重要な役割があります。それは、クリニックを経営するということです。
経営とは何かというと、患者さんに来ていただき、クリニックを継続して運営するための活動全般を指します。
患者さんに受診していただくためのホームページの作成・運営・情報発信、スタッフの採用と教育・マネジメント、経営状態の把握と課題改善、資金の確保、外部の方々との折衝や契約など、多岐にわたります。
厳しい時代のクリニック経営
このような経営全体を整え続けることがこれからのクリニック経営では不可欠です。
そのことを私は「コ・マ・チを整え続ける」と言っています。
「コ・マ・チ」とはコミュニティ・マーケティング・チームの頭の文字をとった略語です。
【コミュニティ】
コミュニティとは、クリニックを受診する可能性のある方々や、その方々をクリニックに紹介してくれる個人や組織の集合体を指します。既に受診されている患者さんやその家族、地域の方々、他の医療機関や介護施設なども含まれます。
コミュニティのコアは、皆さんのクリニックを受診することで健康を取り戻すことができる可能性がある患者さんです。自院にマッチする患者さんと言い替えても良いかも知れません。マッチする患者さんが受診すれば、満足度が高くなり良い口コミをしてくれたり、友人や家族に皆さんのクリニックを紹介してくれる可能性が高まります。こうした口コミや紹介は非常に重要です。なぜなら、新規の患者さんを獲得するためには、信頼性の高い情報源からの紹介が最も効果的だからです。
また、地域の医療機関や介護施設などとの連携も重要です。地域全体で一人の患者さんをサポートするという意識を持ち、お互いの力を活用することが重要です。
【マーケティング】
マーケティングとは、コミュニティの方々が必要とする情報をわかりやすく伝え続けることです。患者さんが自院を選ぶために必要な情報を提供すると言い替えても良いかも知れません。
ここで気をつけたいことは、情報提供の対象を明確にしておくことです。医療機関のH Pを見て感じることは、医療者を対象としているような情報が多いということです。専門用語や医療業界特有の言い回しで提供された情報は患者さんが理解することは困難です。
患者さんが必要としている情報、欲している情報は何でしょうか?
それは現在の自分の健康状態の改善につながる情報です。そのような情報を発信していれば自ずと患者さんはそのクリニックを受診しようと思うはずです。
情報発信のツールはH Pやブログの他に動画やS N Sなど様々なものがあります。自分が得意な媒体を使って、患者さんが必要としている情報をわかりやすく伝え続けてください。
また、この情報発信が院長先生の診療に向き合う姿勢や価値観を現していることも多く、スタッフの採用に役立つこともあります。
クリニックの経営はまず情報発信から
このことをよく理解していただければと思います。
【チーム】
チームとは、院長を含むクリニックのスタッフ全員を指します。さらに、クリニックをサポートしてくれる企業や地域の組織もチームの一員と考えます。チームがしっかりと整っていないと、どれだけ良いマーケティングをして多くの患者さんが受診してもクリニックの経営はうまくいきません。
患者さんは提供した情報をもとにクリニックを受診しますが、想像していた通りかそれ以上の診療・対応が行われないと不満や不信を持ちます。そうなると継続して受診していただくことはできず、悪い口コミをされることになり、いつの間にか受診者数が減ってしまいます。
患者さんへの対応は院長先生一人で行えるものではなく、すべてのスタッフが関わることです。伝えた通りの診療・対応をするにはチーム全体が整っていなければならないのです。
また、対患者さんのみではなく院長先生とスタッフ、スタッフ同士の関係性を良い状態に整えておかなければなりません。この関係性が悪化するとスタッフが辞めてしまうことになりかねません。そして、人手不足が顕著な今の時代には新たなスタッフを採用することは困難です。
スタッフが不足すると、クリニックの運営そのものが困難になってしまいます。チームを良い状態に保ち続けることはクリニック経営の根幹と言っても過言ではありません。
利益を出し続けることの重要性
クリニック経営を継続させるためには、利益を出し続けることが不可欠です。利益が出なければ経営は成り立たず、クリニック経営は続けられません。
利益を出すためには、まず売上を上げる必要があります。売上を上げるためには、患者さんに自院を選んでいただき、満足していただき、継続して受診していただくことが必要です。
そのためには「コ・マ・チ」を整え続けることが不可欠だということを改めてお伝えしたいと思います。
まとめ
クリニックの院長先生の役割は経営者として「コ・マ・チを整え続け健康なクリニックを作る」ことです。
クリニックという組織は生活習慣病のような状態に陥りやすいので、常に組織のメンテナンスをして健康を保つ必要があります。院長先生はクリニックという組織のかかりつけ医のような役割を担うことになります。
スタッフを良い状態に保つためにはカウンセラー・コーチ・指導係のような役割も担わなければならないかも知れません。
診療や経営に関わる業務を行いながら、このような役割を院長先生一人で行うのは困難です。可能な限りスタッフや外部の方々の力を借りながら良いクリニックづくりをしてください。
クリニック経営は非常に大変なことですが、やりがいのある素晴らしい仕事です。多くの困難がありますが、それに向き合い解決していくことで人としても成長できる素晴らしい環境だと思います。ぜひ、このような気持ちで経営に取り組んでいただければと思います。
今回はクリニック経営の全体についてお伝えしましたが、今後分野ごとにさらに詳しくお伝えしてまいります。