小説に学ぶ、クリニックマネジメントの秘訣
ドクター総合支援センターの近藤です。
先日、東京ソラマチで開催している「鬼平展」に行ったあとすぐに、図書館で予約していたこの本を借りることができました。
「長谷川平蔵人足寄場 平之助事件帖1 憧憬」 千野隆司 著
近頃は長谷川平蔵が主人公ではない火付盗賊改方を舞台にした小説をよく見るようになりました。
この本もその一冊です。
平蔵が設立した佃の人足寄場を舞台に、甥の阿比留平之助が寄場を少しでも良くしようと悩みながらも生きていくドラマです。
読みながら、クリニックの経営にも通じる気づきがたくさんありました。
平蔵は平之助にこう言います。
「村田は、定信と同じ考えの者だ。こうと決めたことは譲らない。そして形を守ろうとする」
「そして定信も村田も、一つの達しを出せば、それがあまねく下々に伝わると考えている。甘いと思わぬか」
盗んではならぬと命じても、他に食うものがなければ、他人の食い物に手を出してしまう者がいる。それは正義ではないが、極悪な者と決めつけるわけにはいかない。
ならぬと命じる前に、食い物の手立てをしてやるべきだと叔父は言っている。
「人の心を動かすのは、上からのお達しではない。伝える者の、相手を思う気持ちだ。それを忘れてはなるまい」
「寄場が目指すのは、罪人や虞犯者の拘留ではない。罪人を作らぬことだ」
作者の千野さんが書かれた言葉ですが、いかにも長谷川平蔵が言いそうなセリフですね。
これはクリニックの経営にも大いに参考になるのではないかと感じました。
私はクライアントのお手伝いをさせていただく中で、
「クリニック経営の最大のテーマの一つはスタッフにいかに前向きに元気で明るく働いてもらえるかである。」
とことあるごとに感じています。
このことにほとんどの先生は頷かれると思います。
そして、そのためには様々な手法がありますが、その中で最も重要なことは、
「経営者である院長先生とスタッフ、スタッフ同士の信頼関係を築く」
ことだと考えています。
そして、そのためには院長先生がスタッフを思う気持ち、スタッフ同士が相手を思う気持ちを持てるかどうかが最大のポイントだと思います。
これは言葉にすると簡単ですが、実際に行うのは至難の業です。
朝から晩まで多くの患者さんを診ていると、院長先生もスタッフも疲れたりイライラしたりすることがあるでしょう。
診療以外にも多くの仕事を抱えていて、ゆっくりコミュニケーションをとる時間がなかなか取れないこともあるでしょう。
そのような環境で、相手を思う気持ちを育み持ち続けるのは大変なことだと思います。
どうすれば良い環境のクリニックができるのか、その答えはすぐに出るものではありませんし、環境やタイミングなど状況によって違う答えを導き出さなければなりません。
「経営に終わりはない」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。
クリニックの経営を行うことは大変なことですが、一歩一歩ご自分が目指される良いクリニックに近づいていただければと思います。
この本には、その他にも経営を行う上でのヒントが多く書かれていると思います。
よろしければ次の休日にでも読んでみてください。