クリニックのチーム作りは永遠のテーマです
ドクター総合支援センターの近藤隆二です。
昨年からクリニックのスタッフについてのご相談が増えています。
今日、ご相談をお受けした先生も長年クリニックを経営されていますが、ここに来てスタッフの問題が浮上してきたとのことでした。
クリニック経営をうまく行うためには、コミュニティ・マーケティング・チームを整えることが大変重要です。
この中で、コミュニティ・マーケティングは比較的、整えやすいです。
これは自院を受診する可能性のあるのはどのような方なのかを明らかにして、それらの方々が望んでいることを自院のサービスとし、わかりやすく伝えていくということです。
まず、開院するときに診療科目を明らかにしてアナウンスをすれば、第一ステップを踏み出したことになります。
(とはいえ、選ばれるクリニックであり続けるためには様々な行動を継続する必要があります。)
しかし、チーム作りはそう簡単にはいきません。
チームの構成員はスタッフをはじめ、自院の経営に関わってくれる方々のことですが、ここではスタッフに限ってお伝えしていきます。
クリニックの経営をうまく行うためには、スタッフに協力的に働いてもらうことが不可欠です。
院長先生一人ではクリニックの運営をすることはできないからです。
しかし、今までご縁があった先生方の話を総合すると、なかなかそのような環境が作れていないのが実態です。
その原因は様々ですが、大きく以下のようなことが挙げられます。
1.クリニックの勤務ルールがない。ルールがあってもそれがスタッフに周知徹底できていない。
2.特定のスタッフに仕事を任せきりで、院長先生が関わっていない。
3.院長先生とスタッフのコミュニケーションが取れておらず、信頼関係がない。
1.のクリニックのルールの不備によって起こる典型的な問題は、
開院してすぐにスタッフ全員が辞めてしまう、ということがあります。
就業ルールが何も決まっておらず、社会保険加入の基準がなく加入もしていない、などというケースでこのようなことが起こります。
これでは、スタッフが不安で辞めてしまうのも仕方がないですね。
また、ルールが無いまま経営をしていると、一般常識では考えられない無法地帯のようなクリニックになってしまうことがあります。
これでは、経営がうまく回るはずもなく、新たに採用した常識的なスタッフがすぐに辞めてしまうなどという悪循環に陥ってしまいます。
このようなことを防ぐには、法律に沿った就業ルール(できれば就業規則)を作り、スタッフに周知し徹底することが重要です。
就業ルールを作ると、有給休暇の取得など経営者にとって負担になることがありますが、スタッフにルールを守ってもらうことにより、経営環境が良くなるというメリットもあります。
就業ルールは勤務状態の悪いスタッフに注意を喚起するための基準でもあるのです。
まだ就業ルールがないクリニックは早めに作り、周知徹底し活用することをお勧めします。
2.の特定のスタッフに仕事を任せきりにしていることの弊害は、
そのスタッフに権力が集中してしまい、経営者を脅かす存在になってしまうということです。
業務全体を把握している人が一人だとその人に大きな問題があっても辞めてもらいにくくなります。
人はそんな状態になると、どうしてもわがままや無理を言いだしたりするものです。
そして、中にはスタッフを束ねて院長先生に反抗したりすることもあります。
こうなってしまうと、そのストレスで診療にも悪影響が出ますね。
このようなことを防ぐには、特定の人に仕事を集中させず、スタッフ全員が様々な仕事ができることを目指すことが重要です。
そして、面倒がらず院長先生が定期的にスタッフとのミーティングを行い、現状を把握して課題があれば一緒に解決策を考えることです。
3.の院長先生とスタッフのコミュニケーション、信頼関係がないケースの弊害は深刻です。
誰も信頼していない人の下で一生懸命働こうとは思いませんので、スタッフが自主的に良い仕事をすることは期待できません。
これでは患者さんに選ばれる良いクリニックになることはできません。
そしてもっと怖いのは、スタッフが院長先生に真実を伝えないということです。
何か課題があった時に最も大切なことは現状を正しく把握するということです。
日々診療をしている先生は現場の状況を確認することは困難なので、スタッフに話を聞くしかありません。
そして、特定の人の話が信用できない時には、スタッフ一人一人から話を聞く必要があります。
その時に真実を話してもらえないと間違った現状把握しかできず、対策が打てないか、間違った対策を打ってしまうことになります。
これは大変恐ろしいことです。
このようなことを防ぐには、日々スタッフ一人一人に意識を向け、コミュニケーションをとっていくということが重要です。
状況によっては、院長先生がスタッフ全員とコミュニケーションをとることが難しいかもしれません。
そんな時には、院長先生の右腕となってくれるような経営チームを作ると良いでしょう。
そして、その経営チームのメンバーと日々コミュニケーションをとるようにしてください。
これまで、典型的なスタッフの問題と解決策をお伝えしてきましたが、実際はこんなに簡単なことばかりではありません。
院長先生やスタッフ一人一人の個性、様々な環境の違いで状況は千差万別で、対策もこれで大丈夫というものはなく、すべて個別に考えていく必要があります。
これは日々診療をしている先生の立場を考えると、本当に過酷なことだと思います。
しかし、スタッフが明るく前向きに良い仕事ができる環境がないと、良いクリニックを作ることはできません。
クリニック経営とスタッフに正面から向き合っていただき、日々良いクリニック作りに励んでいただければと思います。
そして、一人では困難な時は、チームの一員である外部の方々の力を借りることを検討してください。