クリニックを開院するときに賃貸不動産を購入するとリスクを軽減できるのでしょうか?

こんにちは。

ドクター総合支援センターの近藤隆二です。

 

これからクリニックを開院する予定のドクターから、開院のリスクをカバーするために賃貸不動産を購入したいという話を聞きました。

賃貸不動産の購入はクリニック経営の助けになるのでしょうか。

 

私はリスクをカバーするどころか、ほとんどの場合は経営や家計を圧迫するリスクそのものになってしまう思います。

現金で購入する場合はさておき、借入金での購入は本当に危険ですので注意してください。

 

不動産を購入し、賃貸した時の不動産所得の計算方法は以下の通りです。

 

総収入金額 − 必要経費 = 不動産所得の金額

 

不動産を投資しようと考える人は、収入(総収入金額)がこれだけあるから、利益(不動産所得)が出るから安心だと考える人がいますが、これは間違いです。

事業や投資の目的は売り上げ(総収入金額)や利益(不動産所得)を出すことではなく、最終的にお金をプラスにすることです。

お金の計算をしてマイナスになるような投資はするべきではありません。

不動産投資により手元に残るお金は以下のように計算します。

 

利益(不動産所得) − 税金 − 借入金返済元本 + 減価償却費 = 手元に残るお金

 

以下のような例で概算をしてみましょう。

物件価格  10,000万円(鉄筋コンクリートマンション 土地2,000万円 建物 8,000万円)
家賃収入   1,000万円(年)
必要経費     500万円(年) うち減価償却費 160万円
不動産所得    500万円(年)
*不動産所得は医業所得と合計して課税されます。
借入金   10,000万円 返済期間10年
返済元本   1,000万円(年)
医業所得   1,200万円(年)

 

売り上げが1,000万円、利益が500万円も出ると、

いいね!これでいこう!

と考える気持ちもわからなくはありませんが、大きな落とし穴が待っています。

 

先ほどの計算式に当てはめてみると、

 

利益(不動産所得) − 税金 − 借入金返済元本 + 減価償却費 = 手元に残るお金
500万円 − 220万円 − 1,000万円  + 160万円 = ▲560万円

 

お金は560万円もの持ち出しになってしまいます。

1,000万円の売り上げ、500万円の利益が出ても560万円のお金が持ち出しになるということがありうるのです。

これはあくまでも事例ですが、私が今まで見てきたケースではほとんどお金の持ち出しになっていました。

不動産を販売する方からはこのような情報はあまり伝わってきません。

そして、

「10年で借入金を返済すればまるまる手取りが増えるので、それまでの辛抱です。」

などという言う人もいるようですが、これでは返済するまでに倒産の危機に瀕してしまいます。

百歩譲って返済まで辛抱するとしても、お金が不足しがちなクリニック開院時やクリニックを開院する前に借入金で賃貸不動産を購入することは大変危険ですのでやめることをお勧めします。

また、すでに賃貸不動産を購入している方は、一度ご自分の確定申告書を確認してください。

現在、不動産所得はいくらなのか、税金はいくらかかるのか、返済額、減価償却費はいくらなのかなどを確認して、お金がプラスなのかマイナスなのかを計算してみてください。

そして、マイナスの場合はその不動産を売却することも検討することをお勧めします。
この件について動画でお話ししていますのでご覧ください。

賃貸不動産を購入するとお金がマイナスになることがあります。購入は慎重にしましょう。

賃貸不動産以外でも借入金で土地や建物を購入するとリスクが出てきます。
動画でお話ししていますので、ご覧ください。

クリニックで土地と建物を買うとお金が苦しくなる

不動産所得の計算方法(国税局)

 

 

 

 

 

 

 

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