事務長を採用すればクリニックの経営はうまくいくのでしょうか?
ドクター総合支援センターの近藤隆二です。
最近、クリニックの院長先生からいくつかご相談をいただきました。
スタッフのマネジメントの課題を抱えている方が多かったのですが、最後には皆さん口を揃えるように同じことを言われます。
「事務長を採用すれば経営はうまくいくと思うのですが・・・」
こんな質問をいただいた時、私は普通のクリニックであれば事務長は必要ないのではないでしょうかとお答えしています。
普通のクリニック、スタッフが数名から10名あまりのクリニックであれば専任の事務長を採用するほどの業務量はないことが多ほとんどですし、これまで事務長を採用してうまくいってる事例を見たことがほとんどないのがその理由です。
専任の事務長を採用して上手くいく可能性があるのは、クリニックの規模が大きく事務処理などの業務が多く、どのような業務を任せるのかが明確になっているケースだと思っています。
複数のクリニックを経営している医療法人などでは専任の事務長を採用する必要があるかもしれません。
このようなケースでも事務長を有効に活かせるかどうかは、院長先生(理事長)が経営方針や任せる業務を明確にして、事務長にしっかり指示をしながら経営全体をコントロールできているかどうかにかかっています。
業務は人に任せながらも経営は任せ切りにせず、しっかりと経営に取り組んでいることが上手くいく要件です。
しかし、先ほど書いたような
「事務長を採用すれば経営はうまくいくと思うのですが・・・」
と言われる方の中には、スタッフのマネジメントなどが大変なので誰かに任せたいという逃げの姿勢が潜んでいることがあるように思います。
自分は診療だけをして、面倒な経営は誰かに丸投げにして楽をしたいという気持ちが透けて見えることがあるのです。
このような動機で事務長を採用しても上手くいくとは思えません。
クリニックの院長先生は会社でいえば社長です。
社長が社員にしっかり向き合わず、経営を誰かに丸投げしていたとすればもはやこれは経営者とは言えませんし、この会社が上手くいくとは思えません。
クリニックの経営も同じことだと思います。
では、普通のクリニックで院長先生の業務が多くなり大変になった時にはどうすればいいのでしょうか。
まず、どのような業務があるのかを明らかにして、自分が絶対やらなければならない業務と人に任せられる業務に分ける。
そして任せられる業務をどんどん人に任せていくことです。
任せる人はクリニックのスタッフかもしれませんし、外部の専門家や企業などの人かもしれません。
何でも一人でやるのではなく、周りの方々の力を活用するということです。
業務は人に任せて軽減できてもスタッフのマネジメントが大変だから事務長にマネジメントを任せたいという方がおられるかもしれません。
しかし、事務長にスタッフマネジメントを任せきりにして上手くいったというケースを私はこれまで見たことがなく、逆にトラブルが起こってしまったという事例しか見たことがありません。
優秀でやる気のある事務長が院長先生とスタッフの板挟みになり、短期間で心身の不調に陥り退職してしまった・・・ こんなケースも多いのです。
また、
「優秀な事務長を採用すれば上手くいくのでは?」
と言われる方も多いのですが、
まず、優秀な事務長を人材市場から採用できる確率は限りなく低いと思います。
これは優秀な看護師、受付スタッフを採用することよりもはるかに困難なことです。
そして、経営を任せられるレベルの人材の募集をするには、それなりの給与額を提示しないと応募はないでしょう。
また採用できたとしても、本当に自分が望むレベルの力量があるかどうかはやってみないとわからず、一度採用すると解雇することは困難です。
こう考えると未知の人を新たに事務長として採用することには大きなリスクがあることがわかると思います。
既に一緒に仕事をしているスタッフや外部の専門家、企業の方々であれば力量や人柄などがわかっています。
また、外部に依頼してうまくいかなければ、業務契約を解約すれば良いのでリスクは最低限に抑えられます。
もちろん、力量や人柄が十分わる信頼できる方が身近におられ、手伝っていただくことで経営が上手くいくこともあるでしょう。
しかし、院長先生自身が経営者である限り、経営を任せ切るにすることはできません。
自分が最終責任者として経営をしていくのだという覚悟を持ち、スタッフやお手伝いいただける方々としっかり向き合い続けることが経営者には求められるのです。
このことについて動画でもお話ししていますのでご覧ください。
スタッフのマネジメントやチームづくりについて「クリニック経営講座・入門編 第3講」でお伝えしていますので、ご関心がある方はご確認ください。